2017.10.12 08:10

[2017衆院選]「ポピュリズムの競演」元新党さきがけ代表・武村正義氏に聞く

政治は苦いこと語れ 
 突然の衆院解散に端を発し、選挙前になって希望の党、立憲民主党と相次いで新党が立ち上がるなど、衆院選は混沌(こんとん)とした情勢になっている。今と同じように新党ブームが沸き起こった1990年代、「新党さきがけ」代表を務めた武村正義氏(83)が10月11日、高知市の高新文化ホールで開かれた高知政経懇話会の講師として高知を訪れた。現在の政治状況をどう見るのか。講演とインタビューの内容を再構成して紹介する。

 ―安倍晋三首相は衆院解散の主な理由として、消費税収の使途変更を挙げた。この解散の評価は。

 「今回の衆院選の争点は、安倍政治を続けるか、この辺りで終わりにするかだ。『国難突破解散』という言い方は的確ではない」

 「安倍さんは歴史認識をはじめとして、戦後の秩序に抵抗を感じている政治家だろう。それが本音だから特定秘密保護法や、あれだけ学者が反対する安全保障関連法を強引に通してしまう。そういう一面もあるが、普段の政治はポピュリズム(大衆迎合)の徹底に本質がある」

 ―具体例は?

 「例えば消費増税。私は94年に3%から5%への引き上げを決めた時の大蔵大臣だったが、増税は戦後政治で最も難しい政策かもしれない。10%への増税は、民主党政権時の野田内閣の終わりに、当時の民主党と野党の自民党、公明党の3党で合意し、社会保障の充実と借金返済に充てるはずだった。それを今、バラマキに使おうという。教育の無償化自体はいい政策だが、問題は財源をどうするかだ」

 ―対する野党。新党を巡る動きは目まぐるしく、公示直前まで選挙の構図が決まらなかった。

 「民進党の前原誠司代表は小池百合子さんの希望の党に全員で合流して再出発しようと賭けに出た。放っておくと民進党から離党者が出てじり貧になるからだが、詰めが甘かった。小池さんに堂々と『排除します』と言われ、そこから『希望』を取り巻く空気ががらっと変わってしまった」

 「『排除の論理』には苦い経験がある。鳩山由紀夫さんらが民主党を結成した時、さきがけ代表だった私は鳩山さんに『新党に来るのはご遠慮願います』と言われた。ものを新しく生む時は求心力というか、包み込むような幅が必要。排除するという論理はなじまないし、それでは世の中うまくいかない」

 ―希望の党と袂(たもと)を分かつ形になった立憲民主党をどう見る?

 「大勢の代表であり続ける自民党は『自由』をやや強調する集団。対して『平等』を主張し、大勢から外れた人たちに光を当てるのも政治で、そこにリベラルを掲げた集団の役割があると思う」

 「ただ、立憲民主党はそんなにたくさんの候補者を立てられなかった。結局、リベラル全体の受け皿にはなりきれない部分がある」

 ―各党の公約が出そろった。

 「解散の理由となった消費税について、あまり議論になっていない。どの党も消費税を上げるとは言いたくないのだ。与党のバラマキに対して、野党は消費増税を凍結したり中止したりという公約。だが、財政赤字は将来世代の負担だ。年間50兆円前後の税収に対し、1千兆円を超える借金がある事実をみんな見て見ぬふりだ。どう対応するか具体策を誰も言わない。これでは国民が政治を判断しようがない」

 「日本の政治状況をみると、ポピュリズムの競演と言わざるを得ない。国民に嫌われることを一つも言わない政治が続いている。この総選挙でも一番残念な点だ。時には苦いことをいうのが本物の政治家であり、きれい事ばかりの政治家は本物ではない。そうした判断をするべき時ではないだろうか」


 高知政経懇話会(事務局=高知新聞企業)は毎月1回、政治や経済、社会の第一線で活躍する著名な講師を招き、講演会を開いている。次回は11月14日、神田外語大学教授の興梠(こうろぎ)一郎氏。問い合わせは事務局(088・825・4328)へ。


たけむら・まさよし 1934年滋賀県生まれ。東京大学卒業後、自治省(現総務省)入省。同県知事から衆院議員。93年に自民党を離党し、新党さきがけを結党して代表に就任。93年に細川政権で内閣官房長官、94年からの村山政権では大蔵大臣を務めた。



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