2017.10.12 08:25

[2017衆院選] 「共謀罪」法 高知県民の理解は… 施行3カ月 全国適用なし

「共謀罪」法の成立に抗議し、デモ行進する市民団体のメンバーら(6月、高知市内)
「共謀罪」法の成立に抗議し、デモ行進する市民団体のメンバーら(6月、高知市内)
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が施行されて約3カ月。全国で適用事例はまだなく、高知県警でも具体的な動きは見えない。高知県民の中には、テロ対策として法改正の必要性を訴えた安倍政権の説明に理解を示す声がある半面、「国による市民監視が強まる」との懸念も根強い。識者は「衆院選の争点として議論されるべきだ」と指摘している。

■皇族来高に備え
 「法律は詳しく分からないけど…」。高知市内の金融機関で働く女性(30)はそう断りつつ、6月のヨーロッパ旅行の経験から「テロを身近に感じた」と語る。

 パリでは2015年11月、コンサート劇場やレストランなどで130人が犠牲になる同時多発テロが起きた。旅先のパリの観光地には、軍隊が銃を持って警戒していたという。

 「日本もオリンピックが近い。『共謀罪』法がテロ対策なら必要だと思う。対象になるのは、危険な思想の人や、犯罪をたくらんでいる人だけじゃないんですか?」

 改正組織犯罪処罰法は、取り締まり対象を暴力団や、特殊詐欺、テロなどを計画する「組織的犯罪集団」と規定。準備や計画など、犯罪が起きる前の段階で予防的に取り締まれる。

 「捜査機関として取り締まる手段が増えるのはウエルカムだ」。改正法成立前の今年4月、高知県警の上野正史本部長(当時)は会見でそう話した。

 施行から3カ月がたった今、暴力団など組織犯罪を長く担当する幹部は「個別、具体的なケースは警察庁と相談して捜査することになるが、現時点でそのような事案はない」と話し、当面は改正法適用の見通しがないことを示唆する。

 一方、県内では今月下旬と来秋、皇族の訪問が予定されており、警備部門が長い幹部は「要人警護は失敗が許されない。テロ対策は国際的な連携による情報共有が必要だ」と改正法を評価する。

■「歴史に学べ」
 市民生活にはまだ遠い「共謀罪」法だが、高知市の男性(60)は「改正法は捜査対象の定義があいまい。捜査権が乱用される恐れがある」と指摘する。

 男性は、改正法や安全保障法制に反対する市民団体の集会によく参加するといい、「周りの雰囲気に不似合いな背広の男が時々遠くからこっちを見ている。県警の監視だろう」。

 右翼や左派組織などの監視は県警の業務であり、男性は「われわれは国民として当然の主張をしているだけ。臆することはない」と強調。一方で「心配なのは社会の分断。『自分は共謀罪の対象じゃない』と考える人が増えると、政府方針への反対者が逮捕されても無関心になる」と懸念する。

 「共謀罪は国が人権を抑えつけるイメージで嫌な感じがする」。太平洋戦争で旧陸軍歩兵第44連隊などに所属した土佐市用石の男性(93)は、自らの従軍体験を基に警鐘を鳴らす。

 「戦時中は、そら息苦しかったぜ。特高(特別高等警察)も戦争反対の意見には目を光らせよったし」と振り返り、「あの時代は意見も自由に言えんかった。歴史を教訓にして学ばないかん」。

 上智大学の田島泰彦教授(憲法・メディア法)は「改正法はテロ対策や東京五輪の成功を名目にしているが、中身は市民の自由を侵害し、監視社会を加速させるとして廃案になった過去の共謀罪法案と変わらない」と指摘し、こう促した。

 「改正法を起点に通信傍受が拡大され、さらに憲法改正で表現の自由や人権、市民活動の制限も進みかねない。国民の自由を制限する法整備の是非について、衆院選を契機に考えてほしい」



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